色素沈着の原因④(肥満・アレルギーなど)
過剰摂取、経口摂取、肥満・摩擦、アレルギー・感染・自己免疫疾患・皮膚炎などを原因とする色素沈着、皮膚変色について紹介しています。■過剰摂取、経口摂取
- ヘモクロマトーシス(鉄過剰)
- 柑皮症
- 銀沈着症(銀皮症)
- シイタケ皮膚炎
- 黒色表皮症(黒色表皮腫)
- 摩擦黒皮症(摩擦性皮膚黒色症)
- リール黒皮症
- 炎症後色素沈着
- 皮膚筋炎
- カポジ肉腫
ヘモクロマトーシス(鉄過剰)
ヘモクロマトーシス(鉄過剰)による色素沈着はメラニンではなく、 その名の通り、鉄分の過剰蓄積を原因とします。中年以降の男女に見られることが多く、 白人ではより一般的です。
鉄過剰の最も多い原因は遺伝(染色体異常)ですが、 その他、輸血や鉄分そのものの過剰摂取でも起こります。
柑皮症
手の平、足底、顔などに黄色の色調変化が現れる病気です。原因は、血中カロテン濃度の上昇で、 カロテノイドの過剰摂取、血清脂質の増加、 カロテノイドの代謝低下のいずれかが主な原因です。
また、 甲状腺機能低下症、糖尿病、拒食症、ネフローゼ症候群、肝疾患などは、 カロテノイドの代謝減少、血清脂質の増加をもたらすため、 合併症として柑皮症を患う場合があります。
銀沈着症(銀皮症)
銀沈着症の最も特徴的症状が、皮膚の変色(青、グレー、黒など)です。主な原因は銀そのものの長期慢性摂取で、 これは病気による銀成分を含む薬の摂取、 または、工業など銀を扱う環境(採掘、精錬、ガラス加工、写真処理など)で発生します。
魚貝類に含まれるメチル水銀とは異なります。
シイタケ皮膚炎
椎茸(シイタケ)を食べた後に起こる皮膚炎ですが、 現在の医療ではアレルギーとは関連付けられていません。シイタケ、特に生のシイタケや戻し汁の摂取後、 激しいかゆみのほか、 蕁麻疹様紅斑などが現れます。
シイタケを食べてから1~4日程度で発症し、 ほとんどの患者は3週間程度で完全に回復しますが、 再発性があるため、一度発症すると、 以降摂取を控えるよう指示されることがあります。
黒色表皮症(黒色表皮腫)
黒色表皮症は、 異常な皮膚の肥厚と黒ずみを特徴とする疾患です。
まれに変色部で臭いやかゆみを有することもあります。
ワキ、脚の付け根、首、へそなど身体の折り目にできる他、 過体重の人ではお腹のシワなどにも現れます。
黒色表皮症の原因は5タイプに分かれるため、 治療は原因を見極めることから始まります。
- 遺伝、家族歴、染色体異常
- 内分泌系の疾患
- 肥満
- 薬物関連
- 悪性腫瘍
内分泌系の異常は種類が多く、 インスリン抵抗性、クッシング症候群、甲状腺機能低下症、アンドロゲンの過剰循環などが報告されています。
肥満は黒色表皮症の最も一般的な原因です。
これは肥満により血中インスリン濃度が高くなり、 この高血中インスリン濃度が黒い皮膚の成長を引き起こすためです。
皮膚の変色を伴う薬は、 ニコチン酸(ビタミンB3)、 血糖値を上げる糖質コルチコイド、 経口避妊薬、成長ホルモン療法に利用される薬などです。
その他、ガンが関連する黒色表皮症は、 悪性黒色表皮腫とも呼ばれ、 いくつかのガンは黒色表皮症の原因になります。
通常時の肌が黒いほどより一般的ですが、 日本人でも黒色表皮症を患う人は少なくありません。
摩擦黒皮症(摩擦性皮膚黒色症)
摩擦黒皮症は摩擦刺激による色素沈着です。直接の原因は摩擦刺激によるメラニンの増加と 幾つかの症例では真皮上層におけるアミロイドの沈着を特徴とします。
名古屋大学環境皮膚学の早川律子教授などの論文によると、 道具の利用による色素沈着は51.7%で、 平均利用期間は11.8年となっており、 入浴時のナイロンタオルが最も多く、 スポンジ、ヘチマ、健康ブラシなども多くなっているほか、 衣服の擦れなども原因となります。
原因となる強度の摩擦を長期的に避けることが、症状の改善につながります。
リール黒皮症
リール黒皮症は戦時中に多く見られた病変で、 頬、額、耳など顔を中心とした高濃度色素沈着です。原因は化粧品による接触性皮膚炎で、その成分は アニリン色素(オレンジII)、タール色素、炭化水素など、 時代や国によって異なります。
1973年には粉末洗剤による接触性皮膚炎でも、 同様の症状が現れた、という報告もありますが、 これらが全てリール黒皮症に分類されるかどうかは明確にはなっていません。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着とは、外傷、皮膚炎、皮膚感染症などによる皮膚の炎症とその後の色素沈着です。
炎症型色素沈着は原因が非常に多いものの、 よく見られる原因としては、
- 紫外線などによる肌の炎症
- 虫刺され
- ニキビ誘発性
- カミソリ負け
- 化粧品によるアレルギー
皮膚の炎症により、 メラニンが過剰に産出されるだけでなく、 原因によっては表皮層だけでなく、真皮内に色素が沈着することもあります。
皮膚筋炎
筋肉と皮膚の慢性炎症を特徴とし、 主な症状は皮膚の発疹、変色、痛み、筋力の低下(対称性あり)です。患者の男女比は1:3で、女性の方が多くなっています。
皮膚の変色は、赤みを帯びた湿疹で、 指の関節、肘、膝で多く見られる他、 爪の周りの毛細血管拡張症、 瞼の上の発疹などが見られます。
詳しい原因は分かっていないものの、 ウィルスや細菌感染が発端と考えられ、 その後、自己免疫疾患と同様の振る舞いが見られます。
カポジ肉腫
ヒトヘルペスウイルス8(HHV8)への感染を原因とする悪性腫瘍(ガン)です。エイズ感染による症状の1つとして、 広く世に知られる様になりました。
赤あるいは紫の色素沈着と皮膚の突起を特徴とし、 発症する部位は口、鼻、喉、リンパ節、粘膜、消化管、肺などです。
原因は以下4種類があり、 それぞれ治療方法と予後に違いがあります。
- エイズ関連
- クラシックカポジ肉腫
- アフリカでの風土病
- 免疫抑制関連