トレチノイン
トレチノインはビタミンA(レチノイド)の50~100倍の生理活性があり、 アメリカ食品医薬品局(FDA)によって、唯一認められている局所シワ改善薬です。一方、トレチノインを有効成分とするクリームは医薬品であるため、 いくつかの副作用もあります。
また、その名称から良く混同される「イソトレチノイン」を含有するニキビ治療薬アキュテインは、 重篤な副作用があるため、厚生労働省でも注意喚起が行われています。
ここでは、トレチノインについて、 レチノールやイソトレチノインとの違い、 効果、利用方法、副作用について、紹介しています。
レチノールとの違い
レチノールは自然に存在するビタミンAを指し、 人間の体内でもβカロチンの破壊により生合成され、 細胞の分化、増殖の過程に影響を与える皮膚の健康に不可欠な栄養素です。一方、トレチノインはレチノイン酸の医薬品形態であり、 その生理活性はビタミンAの50~100倍とも称され、 ビタミンAのカルボン酸、または、レチノイン酸のトランス型の形を有しています。
トレチノインは医薬品として、 WHO(世界保健機関)必須医薬品モデルリストの1つに登録されており、 アメリカ食品医薬品局(日本の厚生労働省にあたる)では、 シワ改善薬として、唯一承認されています。
イソトレチノインとの違い
イソトレチノインは、分子がレチノイン酸に酷似していたことからその名称がつけられ、 にきび治療薬「アキュテイン」の有効成分です。2009年、アキュテインは米国で販売が禁止され、 日本の厚生労働省でも「アキュテイン」は、重度の先天性欠損症を引き起こすため、 利用しないよう注意喚起されています。
効果
レチノイドおよびトレチノインの効果は以下の通りです。
レチノールとトレチノインの効果
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シワ
2007年ミシガン大学医学部で行われた研究「ビタミンAを使った自然老化皮膚の改善」によると、 高齢者施設に常駐している平均年齢87歳の集団に、 0.4%レチノールを24週間(約6ヶ月)、週に最大3回まで適用したところ、 小じわが大幅に改善しました。これは、 水を保持する能力があるグリコサミノグリカンの増加(誘導)と、 コラーゲンの増加によるものであると結論づけています。
色素沈着
1991年カリフォルニア大学で行われた研究「光損傷皮膚の治療のための局所トレチノイン」によると、 軽~中度の光損傷した251名の被験者に対して、 0.05%のトレチノインを24週間(約6ヶ月)適用したところ、 75%において光損傷皮膚の改善を示しました。その他、色素沈着過剰、細かいシワ、肌の粗さなどを改善したほか、 表皮の厚さの組織学的変化、メラニン含有量の減少、角質層の圧密なども見られました。
また、ミシガン大学で行われた研究「中国人と日本人の光老化に関連する色素過剰病変・・・(以下略)」においても、 0.1%のトレチノインクリームによって、 中国と日本の患者の光老化の高色素沈着を大幅に明るくした、と発表しています。
コラーゲン、肌の弾力生成
1983年バウアーEAらによる研究「レチノイン酸のコラゲナーゼ、ゼラチナーゼの発現の抑制(以下略)」によると、 皮膚内のコラーゲン分解を促す酵素であるコラゲナーゼと、ゼラチン分解プロテアーゼの発現を レチノイドが抑制する、と発表しています。ただし、結論では、 正確にはレチノイドの濃度と時間によって生成される中間物が生成を阻害することがわかった、と発表しています。
また、1993年ミシガン大学の研究「トレチノインによる光損傷ヒトの皮膚内のコラーゲン形成の復元(レチノイン酸)」によると、 コラーゲン合成は光の損傷と相関しており、 光損傷があった皮膚では56%もコラーゲンⅠの合成が少なく、 また、トレチノインによりコラーゲンⅠの合成が80%も増加した、と発表しています。
利用方法
トレチノインを含有する医薬品には、 いくつかアレルギー成分が含まれる場合があるため、 事前のパッチテストは必須です。利用中は日光感受性が増大することから、 通常夜間に適用し、 肌を露出する場合は患部が日光に当たらないよう、 日焼け対策が必要になります。
また、以下のような症状を持つ人は、 利用を控える、または医師の指示を仰ぐ必要があります。
トレチノイン利用時の注意事項
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ラットを使った試験において、 先天性欠損症と胎児の頭骨異常の増加を示すデータがあり、 妊娠中または妊娠しようとしている女性、授乳中の女性は、 利用前の妊娠検査を必須とし、 医師の指示のもと使用するよう警告されています。
副作用
トレチノインの副作用は、 利用を停止すると消えることがほとんどですが、 副作用が出た場合はできるだけ早く、医師への相談が必要です。
トレチノインの副作用
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